脳のリハビリテーション
2021年1月20日
『いくつになっても、今日がいちばん新しい日 』より抜粋
以前、ある有名な歌舞伎役者の未亡人が、
聖路加国際病院に入院したことがあります。
私は、毎日一回病棟を回診していましたが、
あるとき、その人がこう申しました。
「先生、私が入院しているのに、
どうして診察にこられないのですか」
「私は、昨日も一昨日もきましたよ」
「いいえ、先生はきていません。いま、はじめてです」
冗談ではなく、
本当に私が病室を訪れたという認識をもっていませんでした。
この人は、
八十歳近くになっても非常に頭脳がはっきりしていた方でした。
非常に賢い人であったのに、その人が病気にかかり、
入院すると、こんなことになるのかと私は思いました。
しかし、
この婦人がこのまま認知症になってしまうのは
あまりにも忍びないことなので、
何とかしてあげたいと考えました。
「私が、いまきたのはわかりますでしょう?
いま、夕方の五時です。明日の朝九時にまたきますよ。
そのとき、あなたは
『先生、昨日の夕方五時にきましたね』といえますか 」
「もちろん、そんなこといえますよ」
そこで、私はもう一度聞きました。
「先生は昨日五時にこられた、
そのとき明日の九時に診察にくることを約束された、
そういえますか」
夫人はうなずき、何回も何回もその言葉を繰り返しました。
翌朝九時、彼女のところに行くと、
顔を見るなり話しかけてきました。
「先生は、昨日五時にこられた。
そして、いままた九時にこられた 」
「そうズバリですね。では、また今日の夕方五時にきます。
そのとき、あなたはそういえますか」
「もちろん、いえますすよ」
そして、夕方五時に彼女のところへ行きました。
「先生は九時にこられた」
「そう、あなたはよく覚えておられるな、今朝のことを。
また、明日の朝九時にきますよ。そのときに、
あなたはそれを覚えていて、いうことができますか」
「もちろんです」
次の朝、私は仕事のために九時に行けませんでした。
そこで、お昼すぎに行きますと、
「先生は九時といったのに九時にこられなかった」といいました。
私はそのとき、
もうこの人は一過性の物忘れから脱却したと思いました。
実際、それからはもうすんなりと元に戻りました。
このようなことが現実にあるのです。
ですから、人が骨折したとか、心筋梗塞になったか、
高熱を出して頭がもうろうとしたときに、
ああ認知症がはじまってしまったと
周囲の人や看護師・医師が思うことなく、
病室をしばしば訪れ、言葉と一緒に行為を見せて、
認知症になろうとする状態から引き離すことが大切なのです。
これを私は脳のリハビリテーションと呼ぶことにしました。
―中略―
このおばあちゃんは何に興味をもっているのか、
このおじいちゃんは何に関心をもっているのか、
どういう音楽が好きだったか、
その音楽を奏でるときに、
「ああ、あの曲だなぁ」とぱっと思い出させる。
記憶を沈みこませないで、浮かび上がらせる、
引き上げるようなことを家族ですれば、
ある程度認知症状が進むのを
防ぐことができると私は思います。
≪箱入り嫁のつぶやき≫
母がお世話になっている施設では、
若い頃の写真を一緒に見て話しを盛り上げたり、
○○さんは、若い頃、○○が得意だったのよ、とか
みんなで共有してくれます。
身近で、
ある有名な歌舞伎役者の未亡人 のようなことが起これば、
脳のリハビリテーションを実践して
認知症が進むのを防ぐことができたらいいなと思います。
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こんばんは♪
脳のリハビリテーション、
脳は鍛えることができると言います。
それを実践できるかどうかが問題なんですね。
投稿: きっちゃん♪ | 2021年1月20日 (水) 22時09分
◆きっちゃん♪へ
おはようございます。
脳も体も鍛えていきたいですね(o^-^o)
投稿: 箱入り嫁 | 2021年1月21日 (木) 05時24分